使ってはいけないお金だったので、負けはなかったことに(英国)

ざっくり言うと

  • ブックメーカーで50万ポンド(約6,900万円)を失ったギャンブラー
  • 50万ポンドは、ギャンブラーにとって使ってはいけないお金だった
  • ブックメーカーはそのことを知っていたので、負けは無効

2020年8月20日、Guardianが報じた記事によると、LadbrokesとPaddy Powerの大手のブックメーカー2社が、障害のある顧客の過度なギャンブルを止めなかったことを理由に、顧客の負け50万ポンド(約6,900万円)がなかったことになりそうな話を伝えています。

Bookmakers 'helped gambling addict squander injury compensation'
(ブックメーカーは、ギャンブル依存症患者が手術での和解金を失う手助けをした)


ブックメーカーに返金を求めているリアム・マッカロン氏は、2007年まで、とあるビジネスのオーナーとして成功していましたが、手術の失敗で重度の運動障害と言語障害を負ってしまいました。

マッカロン氏の弁護士によると、マッカロン氏は現実から逃避するようにギャンブルにのめり込んでいました。そして、大手のブックメーカー2社は3年以上にわたって彼のギャンブルを放置し、彼の損失は少なくとも50万ポンド(約6,900万円)に達しました。

マッカロン氏の弁護士は、英国ギャンブル委員会に提出された書類の中で、彼が給料を得られず、自分の収入を超えてギャンブルをしている可能性が高いことは、両社にとって明らかだったはずだと述べています。


ブックメーカーのスタッフは、2014年に「和解金を受けている」と社内文書に記しており、マッカロン氏の賭け金が手術の失敗で得られた和解金からねん出されており、負ければ減る一方の資産だったことを認識していました。加えて、ブックメーカーのスタッフは、資金源を証明する書類の提出をマッカロン氏に求めましたが、彼は自身では書類に記入することができず、また、ギャンブルで多額の損失を出していることを妻に秘密にしていたため、彼は書類を提出することができませんでした。

マッカロン氏は、「ギャンブルで失ったお金は、生活や介護のために使われる予定だったもので、それを失って私は非常に大きな影響を受けています。また、影響は金銭的なものだけではなく、家族との関係に修復不可能なダメージを与え、私は自分の尊厳と自尊心を失ったと感じています。」と述べています。

マッカロン氏の弁護士は、ブックメーカーが適切に対応していれば、このような事態は防げたと指摘し、彼の損失の返還と私生活への影響に対する補償を求めています。

 

◆批判に直面したブックメーカー

現時点では、ブックメーカー2社は、運営に落ち度はなかったと主張していますが、英国ギャンブル委員会、政治家、有識者らは、ブックメーカーの運営を批判しています。

「ブックメーカーは、彼のギャンブルを止めるべきだったにもかかわらず、何年も彼のお金を奪い続けました。そして、そのお金が手術の失敗で得られた補償金だったという事実は、より悲劇的です。」

「すべての企業には顧客に対する注意義務があり、ことさらギャンブル会社には、弱者を保護する特別な義務があります。」

「ギャンブル依存症対策のシステムが機能していないことは明らかです。政府は、マニフェストで約束したように、2005年のギャンブル法の見直しを早急に進めなければなりません。」

 

◆適切な運営をモットーとするブックメーカー

Ladbrokesの親会社GVCの広報担当者は、正しい運営を行っていると主張しています。

「個別のケースについてはコメントできないものの、これらの状況や類似の状況において、私たちは積極的な措置を取っています。問題あるプレーの兆候があるお客様には、積極的に交流し、アドバイスやサポートをし、お客様の賭けが持続可能かどうかを確認するために、より多くの情報を求めるようにしています。危険にさらされている可能性のある人々を保護し、お客様の安全を確保することは、GVCにとって重要な優先事項であり続けます。」

 

◆さいごに

英国に限らずですが、ギャンブル先進国では、カジノの胴元は大きく賭ける客の資金の出所を確認する義務を負っています。

一方で、英国のスポーツベッティングでは、プレイヤーが損をする余裕があるかどうかを文書化することを求める声が上がっているものの、現在のところ、実店舗のベッティングショップのみ書類の提出が義務付られています。

CAZYの周りにもギャンブルで人生を踏み外した人がたくさんいます。自己責任と言ってしまえばそれまでの話ですが、更なる悲劇を生まないためにも、無謀な賭けに対して何なりかの対策は必要だと思います。

一方で、運営の義務違反を理由に負けの無効を主張するのは、ちょっと虫のいい話のように思います。現在、裁判中のこの主張が認められるなら、僕が失ったなけなしのお金も返していただきたいぐらいです。