
ディーラーのミスで32億円踏み倒される?
ざっくり言うと
- カジノがVIP客に未払いのギャンブルの負け約32億円を請求
- シンガポールの裁判所は、その訴えを棄却
- ことの発端は、バカラディーラーの複数回のミス
2018年10月28日、inside asian gamingが興味深いニュースを報じていました。
オーストラリアのカジノ スター・エンターテインメント・グループは、シンガポールの実業家 ウォン・ユー・チョイ氏に未払いのギャンブル負債4,320万豪ドル(約32億138万円)を再請求していたものの、先週シンガポールの裁判所がその訴えを棄却したとのこと。
『スター・エンターテインメント・グループは、2018年にウォン氏がザ スター ゴールドコーストのVIPテーブルで失った金の支払いを同氏に求めていたが、ウォン氏は、カジノ幹部がバカラディーラーによるミスがあったために2018年7月29日までの損失の責任を同氏が負うことはない、またミスが続いた場合には今後の損失の責任も負うことはないと約束したと主張している。8月1日に再度ミスがあった時点でウォン氏は即座にプレイを中断したと、ウォン氏は主張した。』(IAGより)
◆カジノクレジットを巡るトラブル
個人的にはディーラーのミスに注目したいところですが、今回のトラブルの本質は、カジノクレジット(信用貸付)に認識の相違があったようです。
カジノクレジットとは、顧客の申請に基づいて、カジノやジャンケットが顧客に資金を前貸し(事後に清算)する資格を与えることです。カジノやジャンケットは、顧客の過去の遊興状況や外部の信用調査機関を使って、顧客のクレジットライン(信用貸付の上限)を設定します。
一般的には、カジノクレジットを設定する際、カジノは小切手を担保として受け取り、返済期間や分割支払い額などについての同意書を作成します。この小切手には金額が記入されているものと、未記入のものがあり、金額が未記入の小切手はVIPでよく使用されています。また、白紙の小切手は、後にカジノと顧客の合意によって額面が決定されます。
また、カジノが受け取った小切手は、そのまま金融機関には持ち込まれず一定期間カジノで保管され、約束通り貸付が返済されない場合、カジノはその小切手を金融機関に持ち込み換金することになります。ただし、顧客の当座預金に十分な残金がなければ、カジノは換金することができません。
今回のトラブルでは、ウォン氏はオーストラリア到着時、カジノに空欄の小切手を手渡し、その後に金額が記入されましたが、その合意プロセスに問題があったようで、ウォン氏はシンガポールに戻った時点でその小切手をキャンセルしたとのことです。
◆さいごに
こうなることが分かっていたのであれば、ウォン氏はすごいギャンブラーだと思います。
また、トラブルの詳細が公表されていないため、カジノディーラーがどんなミスをしたのかは不明ですが、32億円というあまりにも大きすぎる損害につき、このトラブルに巻き込まれたディーラーさんは、ちょっと可哀そうですね。