税金逃れ対策、ゲーム履歴管理から源泉徴収まで

ざっくり言うと

  • 政府・与党は、カジノで得た所得に課税するための原案を発表
  • プレイヤーのチップ購入額、換金額、ゲームの勝敗などを記録・保存
  • 訪日外国人には、カジノで得た所得を源泉徴収

2019年11月27日、「政府・与党がカジノで得た所得に課税するための原案を税制調査会に示した」ことを複数のメディアが報じています。

原案では、プレイヤーの税金逃れを防ぐため、カジノにプレイヤーのチップ購入額、換金額、ゲームの勝敗などを記録・保存させるほか、訪日外国人がカジノで得た所得を源泉徴収する仕組みを導入する方向で検討が進んでいるとのことです。


驚愕の内容につき、産経新聞の記事を引用します。

『カジノの勝ち負け、事業者が管理 政府、利用者への課税案を提示』(産経新聞)

日本人には、

『カジノで得た利益は競馬などと同様に一時所得として課税の対象となる。本来であれば、取引のすべてに課税するべきだが、全てを把握するのは困難なため、原案では、利用者が退場する際、チップを換金した額から、入場時と場内でチップを購入した額の合計を差し引いた分を所得とみなし、課税対象とする。IR実施法では、マイナンバーカードで利用者の本人確認が義務化されていることから、これを活用して事業者が利用者ごとの購入・換金額や、個々のゲームの勝ち負けの記録を保存し、利用者に提供、申告してもらう仕組みにする。利用者ごとの勝ち負けを記録することで、カジノで勝った人が、負けた人にチップを預けて、所得を減らすといった不正も防ぐ。』(産経新聞)

さらに、訪日外国人には、

『訪日外国人の場合、海外に出国すると、税務調査などで納税を促すことが困難なことから、海外での事例を参考に、源泉徴収の仕組みを設けることを検討する。』(産経新聞)



◆あまりにも厳しすぎる税金逃れ対策

例えば、ラスベガスのルール(ネバダ州規則6a)では、24時間以内に10,000ドルを超える通貨取引があった場合、また、10,000ドルを超えるチップが換金された場合、カジノはプレイヤーの正確な個人情報を記載した通貨取引報告書を作成し、米国内国歳入庁に報告する義務を課せられています。

某カジノ倒産のきっかけとなったFBIによる強制突入も、実際のプレイヤーとは異なる人物の換金があったことによる摘発だったと言われています。それほど厳しいルールのもと、ラスベガスのカジノは適切な運営がなされています。

一方で、10,000ドル未満の通貨取引や換金は自由に行われ、納税に関しても個人の自己申告に委ねられているのが実情です。

今回発表された原案がそのまま適用されることになれば、日本カジノは世界基準をはるかに超えた厳しいものになる可能性があります。



◆さいごに

現在のテクノロジーを持ってすれば、ICチップや監視カメラによって、賭けの履歴を管理することは十分可能だと思います。しかしながら、そこまで徹底した管理を行ってお客さんがきてくれるのかは疑問です。カジノは世界のいたるところにありますし。

また、日本カジノがこの原案どおりとなれば、では、競馬・競艇などの既存の公営ギャンブルは本人確認すらない状態でいいのか、パチンコの三店方式を黙認したままでいいのか、という話に発展していくことも容易に想像がつきます。

納税が国民の義務であること、かつ、カジノにはクリーンさが不可欠であることは重々承知のうえで、さすがに、今回の原案はちょっとやりすぎなのでは。

「白河の 清きに魚も 住みかねて もとの濁りの 田沼恋しき」

 

※12月6日追記

本件、どうやらカジノの実情を知らない財務省の見切り発車だったようですね。万一、原案通りの運営がなされたなら、カジノで遊びなれた外国人はもとより日本人も、まず日本でプレイすることはなかったと思います。さすがに。

『自民党のIRプロジェクトチーム(PT)の岩屋毅座長はブルームバーグのインタビューで、政府案は「カジノ所得だけをターゲットにしている」とした上で、競馬など他の公営競技での所得と「同等の扱い」にすべきだと指摘。「顧客のみならず、事業者の投資意欲を著しく萎縮させる」として「案の撤回を強く求める」意向を明らかにした。(中略)岩屋氏は、政府案はIR事業者に「多大な事務負担をかける内容」であり、「世界でそのような制度をとっている事例はない」と説明。より多くの訪日外国人客を呼び込むには、制度面でも「国際競争性という観点」を重視する必要があるとした。』(Bloomberg)

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