<ネットカジノの悲劇>なぜ青年は自殺することになったのか

ざっくり言うと

  • 英国ギャンブル委員会は、オンラインカジノにはまり25歳で命を絶った青年に関する調査結果を公表
  • 青年は、オンラインカジノで約100日間に450万円を失っていた
  • カジノ事業者は、大口顧客の資金の出所、財産状況などを把握しておくことが定められている

日本では、人気番組「テラスハウス」に出演していた女子プロレスラーの木村花さん(22歳)が誹謗中傷によって自殺したとされるニュースで持ちきりですが、こちらはオンラインカジノにはまって命を絶った25歳の青年の話です。

UK: Playtech to pay £3.5 million after
(画像出典:YOGONET

2020年5月27日、英国ギャンブル委員会は、PT Entertainment Services (以下、PTES)の社会的責任違反とマネーロンダリング対策違反によって、25歳の若さで命を絶った青年に関する調査結果を公表しました。

PTESは、本調査中にライセンスを放棄し廃業していますが、英国ギャンブル委員会は、調査結果を公表することが公共の利益になると判断して、その詳細を明らかにしています。

Gambling Commission investigation into systemic failures in player protection at PT Entertainment Services (PTES) leads to company closure
(ギャンブル委員会の調査により、プレイヤー保護に関してシステム的な欠陥のあったPT Entertainment Services (PTES)が閉鎖される。)

 

◆調査の概要(何が問題だったのか?)

委員会は、PTESが青年のデビットカード取引のいくつかが拒否されたことを認識していたにもかかわらず、責任あるギャンブルに関する必要な確認を行っていなかったと結論づけています。加えて、PTESは、青年に金銭的な余裕があるかを確認することなく、青年にVIPの地位を与えたことも深刻で容認できない失敗だったとしています。

・マネーロンダリング対策違反
ライセンス条項12.1.1、12.1.2は、マネーロンダリングとテロ資金調達に関するリスクアセスメント(危険性や有害性等の調査)の実施や顧客とのビジネス関係を継続的に監視することを定めています。

・社会的責任違反
ライセンス条項3.4.1は、顧客が問題のあるギャンブラーを示す可能性がある場合、カジノ事業者は、VIPとして指定された顧客に対して特別な規定を設けて、顧客との交流に関する方針と手順を設け対策を講じることを定めています。


調査では、PTESは既にライセンスを放棄して廃業していますが、もしライセンスが放棄されていなければ、委員会は350万ポンドの罰金を課し、その他の制裁措置も検討していただろうとしています。

PTESは、619,395ポンド(約8,176万円)を慈善団体に寄付し、その親会社のプレイテック社は、今後5年間でメンタルヘルスやギャンブル関連の慈善団体に総額500万ポンド(約6億6,000万円)を寄付することを約束し、社会的な制裁を受けることになっています。

委員会のニール・マッカーサーCEOは、「この事件は、なぜVIP客の管理を見直さなければいけないのかを示しています。カジノ事業者は、責任を持って顧客と接するために全力を尽くさなければなりません。我々はまもなく、カジノ事業者がVIP客にインセンティブを与える方法を恒久的に変更するための協議を開始する予定です。」と述べ、この事件を締めくくっています。

 

◆経緯(具体的に何が行われ、どのぐらい負けていたのか?)

2016年12月26日、青年は、当該オンラインカジノでアカウントを開設しました。

2016年12月26日、青年がアカウントを開設した日、青年のデビットカードからの2つの入金は銀行から拒否されました。その後、青年は12月26日と27日に18,700ポンド(約247万円)を入金しました。この金額は、PTESの平均的な顧客の預金額よりもはるかに高額なものでした。

2016年12月28日、青年は、さらに4,000ポンド(約53万円)をデビットカードから入金しようとしましたが、再度、銀行から拒否されました。

2016年12月28日、PTES の VIP マネージャは、青年に電子メールを送り、プレゼントや無料ボーナスを提供する旨を伝え、青年にはApple Watchがプレゼントされました。

2016年12月29日、青年が 22,000 ポンド(約290万円)負けたこと、 25 歳であること、職業を知らないことなどがPETS社内で共有されましたが、社会的責任や問題のあるギャンブラーのチェックを行っていませんでした。逆に、PTESは、350万ポンド以上を獲得するチャンスがあるジャックポット・ジャイアントと呼ばれるイベントに招待するメールを青年に送っています。

2016年12月26日から2017年4月までの期間中、青年は、ルーレットとブラックジャックのライブゲームに合計4,458,782ポンド(約5億8,856万円)を賭け、4,465,007ポンド(約5億8,938万円)を獲得し、差し引きで6,225ポンド(約82万円)勝っています。

その後、2017年4月1日から5日までの期間に、青年は119,395ポンド(約1,576万円)を入金して負けています。その間、PTESは、青年がそのレベルのプレイをする余裕があるかどうかの確認を行っていませんでした。

2017年4月12日、PTES は青年の自殺を知ってアカウントを停止しました。

青年は、アカウント開設から約100日間に148,095ポンド(約1,955万円)を入金し、114,027ポンド(約1,505万円)を出金していたことから、34,068ポンド(約450万円)負けたことになります。


委員会は、失った金額の多い上位20人と、獲得した金額の多い上位20人に拡大して調査を行っています。結果、失った金額の多い上位20人では2件の顧客とのやりとりしかなく、獲得した金額の多い上位20人では1人の顧客とのやりとりしかなかったことが判明しています。また、40人のうち、39人が自動的にVIPステータスを与えられていました。

2016~2017年の期間中、PTESには240,126人のアクティブな顧客がいましが、責任あるギャンブルに関するメールが送信されたのは、わずか633人だけで、全体の0.26%でした。委員会は、この数字は異例の低さであり、PETSが社会的責任に致命的な欠陥があったと指摘しています。

 

◆さいごに

日本政府は、責任あるギャンブルとマネーロンダリング対策に関して世界最高水準の規制を導入すると宣言しています。あまり知られていませんが、カジノ事業者は、大口顧客の資金の出所、財産状況などを把握しておくことが定められています。海外のカジノで遊んでいるVIPならまだしも、懐を探られることに慣れていない日本人ギャンブラーにこのルールが受入れられるのかは、正直、疑問です。

2020年1月7日に設置されたカジノ管理委員会で、‬このあたりのことは検討されているのでしょうか、規制を強めれば客が寄りつかずカジノの収入は伸びないでしょうし、今後の大きな課題のひとつであることは間違いないですね。

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