そっち?公営ギャンブルの課税強化へ

ざっくり言うと

  • 政府は、公営ギャンブルで大穴を当てた人の課税逃れを防止する方針を固める
  • インターネットで馬券などを購入し、1口当たり1千万円以上の大穴が対象
  • いわゆる「WIN5」「Dokanto!」「当たるんです」などの重勝式が対象

2019年11月27日、政府・与党がカジノで得た所得に課税するための原案を税制調査会に示したことに端を発する本件。意外な展開を見せています。

<過去記事>税金逃れ対策、ゲーム履歴管理から源泉徴収まで


◆見送りとなったのはいいものの

原案では、プレイヤーの税金逃れを防ぐため、カジノにプレイヤーのチップ購入額、換金額、ゲームの勝敗などを記録・保存させるほか、訪日外国人がカジノで得た所得を源泉徴収する仕組みを導入する方向で検討が進んでいるとのことでした。

しかしながら、世界のスタンダードからかけ離れた課税方針に対して、自民党内からも、IR事業者の投資意欲を著しく萎縮させると反対の声があがっていることをブルームバーグが報じていました。

「自民党のIRプロジェクトチーム(PT)の岩屋毅座長はブルームバーグのインタビューで、政府案は「カジノ所得だけをターゲットにしている」とした上で、競馬など他の公営競技での所得と「同等の扱い」にすべきだと指摘。「顧客のみならず、事業者の投資意欲を著しく萎縮させる」として「案の撤回を強く求める」意向を明らかにした。」(ブルームバーグ)

結果、当初の課税方針は見送りとなり、与党の2020年度税制改正大綱では具体的な方針は示さず、「IR事業の開業に向けて、今後検討する」との考えの記載にとどめることとなりました。


◆あらぬ方向に飛び火

岩屋座長の「カジノ所得だけをターゲットにしている、競馬など他の公営競技での所得と同等の扱いにすべき」との指摘を受けてのことなのかはわかりませんが、「だったら他の公営ギャンブルにも課税すればいいんだよね?」と言わんばかりの新たな方針が政府より打ち出されました。

高額馬券、課税逃れを防止 ネット購入、1千万円以上対象(共同通信)

「政府は18日、競馬や競輪など公営ギャンブルで高額な払戻金を受け取った人の課税逃れを防止する方針を固めた。インターネットで馬券などを購入し、1口当たり1千万円以上を受け取った人が対象で、受領者に関する情報の提供を運営事業者に要請する。払戻金が高額化している事情を踏まえ、監視体制を強化する。2020年にも実施する。競馬場で買った馬券などが当たり、払戻金を受け取る際に本人確認は求められていない。だが、近年は複数のレースの勝ち馬を予想する「重勝式」という投票法が広がり、払戻金が数億円に上ることもある。」(共同通信)

 

◆大穴的中!8割が未申告?

高額払戻金が納税されていない実態については、以前から問題視されていました。

「競馬や競輪などでの高額払戻金について会計検査院が調べたところ、1千万円以上の「大穴」で当たった金額の8割ほどは税務申告されていない可能性があることがわかった。主催者側から聞き取った2015年の払戻金約127億円に対し、税務申告されたとみられるのは二十数億円だったという。関係者への取材でわかった。」(朝日新聞デジタル2018年10月10日)

<過去記事>公営ギャンブルの大穴的中!8割が未申告?

 

◆対象となる公営ギャンブルとは?

政府方針には「インターネットで馬券などを購入し、1口当たり1千万円以上を受け取った人が対象」とあり、万馬券ならぬ1000万馬券、いわゆる「重勝式」が対象となっています。

「重勝式」とは、複数のレースの結果を予想する投票方式のことで、賭けの難易度が格段にあがるため、より高額な払戻金が期待できます。具体的には、2019年12月18日、和歌山競輪の7重勝単勝式「ドカント・セブン」(1口200円)で出た3億1,630万円、2019年2月24日、中央競馬の「WIN5」(1口100円)で出た4億7,180万円などの超大穴の話です。

また、「重勝式」の投票方式には、買い目を予想して指定できるもの(予想系)と、買い目を指定できない運任せのもの(LOTO系)があります。

競馬(予想系&LOTO系):「WIN5」
競輪(LOTO系):「Dokanto!(ドカント)」
オートレース(LOTO系):「当たるんです」

「WIN5」のような予想系のものはガチで大穴を狙い、「Dokanto!」のようなLOTO系のものは宝くじ感覚で気軽に遊べることが特徴です。

 

◆さいごに

今回は、1口当たり1千万円以上の超大穴のみが対象とされていますが、公営ギャンブル売上の約6割がネット経由となった今、購入履歴や勝敗の把握は、技術的には極めて容易なことです。また、公営ギャンブルでは、原則、50万円の特別控除を超える利益があった場合、超えた額の2分の1が所得税の課税対象となります。つまり、お上の鶴の一声で、ネット購入の対象となる当たり券のすべてに対して、課税することも可能という話です。

カジノの課税議論に端を発する本件、もはやカジノだけの話ではなさそうですね。

<過去記事>公営ギャンブルのネット比率を調べてみた