大手メディアが報じない、中国の海外カジノ包囲網

ざっくり言うと

  • 日本政府はIRがインバウンドの起爆剤になるという当初のスタンスを変えていない
  • 世界のカジノを潤わせてきた中国マネーが、中国政府によって閉ざされようとしている
  • 中国人のインバウンドに期待する海外カジノをブラックリスト化して規制

国内では、コロナ禍の中、横浜、和歌山、長崎とIR事業者を決める公募が盛り上がりを見せています。

一方で世界に目を向ければ、新型コロナウイルスの感染者数が1億人、死者数が216万人を超え、観光情勢は一変していますが、政府はIRがインバウンドの起爆剤になるという当初のスタンスをいまだ変えていません。

そして、ここにきて、世界のカジノを潤わせてきた最大の功労者の中国マネーが、中国政府によって閉ざされようとしています。このニュースは、海外のカジノメディアでは、大きく取り上げられていますが、IRをインバウンドの起爆剤とする日本政府には都合が悪いニュースなのか、日本の大手メディアで見かけることはありません。

 

◆進む、中国の海外カジノ包囲網

新華社通信によると、中国文化観光部は、中国人観光客をギャンブル活動目的で誘致している海外観光地のブラックリストを拡大する予定だと報じられています。

中国のブラックリストが最初に発表されたのは、2020年8月。
中国文化観光部は、中国本土の客をターゲットにしたカジノをオープンすることで、同国のアウトバウンド観光市場を混乱させている海外観光地のブラックリストが作られました。ブラックリストに掲載された海外都市や観光地に行く中国人には旅行制限がかけられることになります。

また、3月1日に施行された刑法の変更で、海外ギャンブルの目的のために本土の中国人を組織した場合、犯罪行為となることが明記され、中国公安部は、国境を越えたギャンブルや通信詐欺を報告するためのサイトを公開しています。

中国本土では国営の宝くじを除いて、すべてのギャンブルが違法となっています。現在、カジノが許されているのは中国特別行政区のマカオだけですが、マカオでは、中国人富裕層がギャンブルではなくマネーロンダリング目的でカジノを利用するケースが多発し、マカオの規制は強化されています。結果、中国人富裕層がフィリピン、カンボジア、ベトナム、シンガポールのカジノに大量の資金を流出させる状況となっていました。

これらのブラックリストや法改正によって、ジャンケットや地下銀行は、かなり細かい検査を受けることになり、中国公安部は、法改正後の9ヵ月間で、国境を越えたギャンブルなどで国外に流出する予定だった約1,500億ドル(15兆円)を特定したと発表しています。

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また、ブラックリストは、掲載されている国名こそ公表されていませんが、有識者によると、フィリピン、カンボジア、ベトナムなどの東南アジアのカジノ、さらにはオーストラリアのカジノにも及んでいる可能性があると噂されています。中国の一部であるマカオがブラックリストに含まれるているかは、有識者の中でも意見が分かれているようです。

 

◆さいごに

2017年の大和総研の試算によれば、根拠は薄いものの、カジノ運営で毎年2兆円の経済波及効果が期待できるとされ、ほぼ当確と噂されている大阪IRは、経済波及効果を毎年7,600億円、IR全体の年間売上4,800億円、うちカジノの売上は3,800億円と試算されています。

あまり大きく取り上げられていませんが、大阪IRの「基本構想(案)」では、カジノ客の75%が日本人だと想定されています。

狙いが日本人のお財布なので、中国マネーに頼らなくても問題ないということなのかもしれませんが、それはそれで、政府やIR誘致を目指す地方自治体が掲げるインバウンドの起爆剤とはなり得ません。

都合の悪い真実を伏せて、IRをごり押しするのはいかがなものかと。
IRへの不信感が高まれば、IRそのものが遠のいていくように思います。


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