カジノに顔認証は必要?

ざっくり言うと

  • 検討が進むギャンブル場における顔認証
  • 依存症対策であれば、マイナンバーカードだけで十分なのでは
  • イカサマ防止の観点では、顔認証システムの導入は不可欠

令和を迎え、最初に何を書こうか迷ったのですが、今回は何かと話題の顔認証について考えたいと思います。

平成の最後に起こった悠仁さまの机に刃物がおかれた件、4月26日に事件が発生し29日の逮捕とスピード解決でほっとしています。

◆証明された顔認証の有効性と必要性

事件解決の立役者は、2009年に警視庁の附置機関として設置された画像収集、解析を行う専門チームSSBC(捜査支援分析センター:Sousa Sien Bunseki Center)。SSBCは、警察が設置している街頭の防犯カメラに加え、民間の防犯カメラ映像、交通系ICカードの利用履歴、Nシステム(自動車ナンバー自動読取装置)などの様々なデータを分析することで犯人逮捕の一翼を担っています。今回の事件解決も、複数の断片的なカメラ映像を1本の線で結ぶリレー形式の捜査を行い、犯人が滞在する神奈川県平塚市内のホテルを特定したとのこと。途中で衣服を着替えるなどの偽装工作があったにもかかわらず、実質3日でのスピード解決は、警察の本気度がひしひしと伝わってきます。


◆検討が進むギャンブル場における顔認証

2019年4月19日のギャンブル等依存症対策の基本計画の閣議決定により、ギャンブル場に顔認証を導入する可能性が高まっています。

「競馬主催者等は、数万人という来場者の入退場時及び場内滞在時においてのスムーズかつ安全な導線の確保が可能な個人認証のための支援ツールとして、平成 31年度中に顔認証システムの研究を開始し、3年を目途とした研究を踏まえ、その導入の可能性を検討する。」

政府は、安全対策や依存症患者らの入場制限対策を強化するため、ギャンブル事業者や業界に顔認証システムの活用を検討するよう求めています。


◆技術的には十分実用レベル

顔認証は、既に成田空港の入管審査で使用され、2020年の東京オリンピック、2025年の大阪・関西万博でも使用される予定です。大阪メトロは、2024年度に全駅で顔認証によるチケットレス入場システムを導入すると発表しています。更に身近なところではiPhone X以降に導入された「Face ID」など、顔認証は技術的にはまったく問題のないところまできています。

また、大手系列のパチンコ店が既に顔認証による顧客管理を行っていることは知る人ぞ知る話。顔認証カメラは、客の顔と来店時間を記録し、性別や世代の自動判定に加え、来店回数をカウントしています。管理者が不審者やお得意様と判断した場合は登録でき、以後、不審者が来店したときに警告画面が出るといった仕組みです。(それを遠隔や出玉操作に使っているかは別の話です)

カジノ業界では、マカオの「シティ・オブ・ドリームス」などを運営する香港メルコリゾーツ&エンターテインメント社が業界初となる生体認証ゲート「メルガード」を公開しています。


顔認証でカジノ入場規制 運営会社が試作品公開(1分13秒)


◆ギャンブル依存症対策に活用

現在の議論では、カジノへの入場に当たってマイナンバーカードの提示を求め、本人確認、ギャンブル依存症患者の入場制限、入場回数管理(7日間に3回、28日で10回まで)を行うとしています。これらの要件を満たすだけなら、顔認証は不要でマイナンバーカードだけで十分な気もしますが、希望的観測として、カジノ誕生後の数年は珍しさも相まって、日本カジノは大混雑になるのではと思っています。となると、成田空港の入管審査と同様に、マイナンバーカードの写真と本人を照合する作業を円滑に行うために顔認証は必要になるかもしれません。


◆活躍の場はチート(イカサマ)対策では

Prism Solutions Inc.のレポート『カジノ事業における重大な課題と対策~イカサマ(チート)・不正、ギャンブル依存症、マネーロンダリング~』によると、2015年度のラスベガスの不正による被害総額は推計52億円、発覚した事件数は約600件だったそうです。

シンガポールクラスのカジノ(テーブル数は約500台)を運営するために必要なディーラーの人数は、約2,800人。それが国内で3ヵ所となると合計で約8,000人のディーラーが必要となるのですが、海外から経験豊富な外国人ディーラーや、海外での勤務経験のある日本人ディーラーを集めたとしても、ディーラーの大部分を日本人の新米ディーラーが務めることになるはずです。

個人的には、二次元ディーラー(マシン)の台頭を本命視していますが。
過去記事:日本カジノは二次元ディーラーが主流になるかも?

現実的な話として、新米ディーラーがカジノの大部分を占め、かつアナログで対応した場合、世界から押し寄せるイカサマ師の餌食になることは明らかです。熟練したイカサマ師によるパスト・ポスティング(後賭け)などのイカサマは、新米ディーラーではまず見破ることはできません。

※パスト・ポスティング(Past-Posting)とは、クラップス、ルーレット、ブラックジャックなどのゲームで、当たりが確定した後(もしくは受付終了後)にベットするイカサマです。これらについては、過去記事で何度かとりあげています。

過去記事:読書感想『カジノのイカサマ師たち』
過去記事:組織的なディーラーの不正(マカオ)

となると、顔認証に限らずですが、イカサマ師に対抗するには、またディーラーの不正を防止するためにも、最新のセキュリティシステムは不可欠ということになります。
過去記事:組織的なディーラーの不正(最新のセキュリティシステム紹介)


◆まとめ

長々と書いてきましたが、CAZYは、カジノにはイカサマ防止の観点から顔認証システムの導入は不可欠だと考えています。理屈抜きに今の時代、テクノロジーの恩恵を享受しない手はありません。

一方で、あくまでも一般論としてですが、テーブルゲームの勝ちには課税されないという世界レベルでの暗黙の了解が存在します。本来は申告・納税すべきものですが、テーブルゲームでは特定の客がいくら使っていくら勝ったのかをカジノ側が把握できないことを理由としているようです。つまり、申告・納税が本人の良心とモラルに委ねられている点は、カジノもパチンコや競馬と同様です。

しかしながら、テクノロジーが進化していくにつれて、カジノ側が賭けの履歴を正確に把握できる日もそう遠くはありません。ゆくゆくは、これが大きな問題として世間を騒がせることにならないといいのですが。