日本のスポーツ賭博はどうなるの?

ざっくり言うと

  • 2018年5月、アメリカの連邦最高裁判所はスポーツ賭博の解禁を認める
  • 北米4大プロスポーツリーグのNFL・MLB・NBA・NHLのすべてがカジノ事業者と連携
  • 残念ながら、日本ではスポーツ賭博は認められない方針

今回は、スポーツ賭博(スポーツ・ベッティング)の現状と見通しについて書いていきます。

まず、世界的に一番大きな動きは、2018年5月14日、アメリカの連邦最高裁判所が、野球、バスケットボール、アメフトなど、スポーツ賭博の解禁を認める判断を下したこと。

以後、ダムが決壊したかのごとく、複数のカジノ事業者が我先にとプロスポーツ団体との距離を縮めています。



◆アメリカのスポーツ賭博に関する動き

目立ったところでは、

2018年5月、スポーツ賭博解禁

2018年7月、MGM社は、NBA(ナショナル・バスケットボール・リーグ)とパートナーシップ契約を締結

2018年10月、MGM社は、NHL(ナショナル・ホッケー・リーグ)とパートナーシップ契約を締結

2018年11月、MGM社は、MLB(メジャーリーグ・ベースボール)と独占的パートナーシップ契約を締結

2019年1月、シーザーズ・エンターテインメント社は、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)とスポンサーシップ契約を締結

2020年、NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のレイダースがカリフォルニア州オークランドからラスベガスに本拠地を移転し、ラスベガス・レイダースが誕生する予定


これで、北米4大プロスポーツリーグと称される、NFL(アメリカンフットボール)・MLB(野球)・NBA(バスケットボール)・NHL(アイスホッケー)のすべてが、何らかの形でカジノ事業者との関係を持ったことになります。

ちなみに、スポーツ賭博の先進国はヨーロッパなのですが、例えばイングランドのプレミアリーグでは20チームのうち9チーム、チャンピオンシップでは17チームのすべてに、カジノのスポンサーロゴがユニフォームに入っおり、カジノ業界とスポーツ業界が密接な関係を築いています。

<例>
Bournemouth – Mansion 88.
Burnley – LaBa 360.
Crystal Palace – ManBetX.
Everton – SportPesa.
Fulham – Dafabet.
Huddersfield – OPE.
Newcastle United – Fun88.
West Ham – Betway.



◆なぜ、アメリカでスポーツ賭博が解禁されたのか?

スポーツ賭博解禁の背景には、違法賭博の撲滅と、政府や地方自治体の適切な監視・監督のもと税収を増やすことが目的にあるようです。

American Gaming AssociationとPlunkett Researchの調査結果によると、アメリカではすでに年1,500億ドル(約16兆2,000億円)規模の違法なスポーツ賭博市場があるとされています。これはアメリカのスポーツ産業の約3割にあたり、一説にはその何倍もの市場があるのではとも言われています。

今後、スポーツ賭博が解禁され、1,500億ドルの違法な賭け金がそのまま合法的な市場にながれれば、そこから生まれる税収は21億ドル(約2,268億円)にものぼります。

<算出方法>
スポーツ賭博の配当は、一般的にパリミュチュエル方式(投票券の総売り上げをプールし、胴元はそこから一定割合を差し引き、残りの金額を勝ち投票券に配分する方法)を採用しており、ハウスエッジ(控除率)は10~30%、また、既にスポーツ賭博が合法化されているラスベガスの税率は約7%。

税収=1,500億ドル×20%(ハウスエッジ)×7%(税率)=21億ドル


余談ですが、今回の動き、何かに似ていると思いいろいろ考えたのですが、1933年の禁酒法解禁、最近ではマリファナ解禁とそっくりです。禁酒法が施行された結果、酒の密造や密輸入がの増加し治安は最低レベルまで悪化。また、粗悪な密造酒によって多くの人が健康を害することになったと言われています。そこで、これまで違法とされていたものを合法化し、国が正しく管理・運用することで、違法なものを撲滅する起死回生の政策です。このダイナミックさは、日本政府にも見習って欲しいものです。



◆では、日本でスポーツ賭博は解禁される?

結論から申しあげると、残念ながら、日本ではスポーツ賭博は認められない方針です。

2017年7月、政府が公表した「IR整備推進会議 取りまとめ」の中で、認可されるゲームの種類として、「事業者がカジノ行為の実施を管理し公正性を確保することができるものに限定すべき。例えば、単純な顧客同士の賭けやスポーツベッティング等他者が実施する競技(勝負)を賭けの対象とすることは不可」と明記されています。ただし、その後の議論で、世界的に人気の高いポーカーは、顧客同士の賭けであるが例外的に認める方針となっています。

ここからはCAZYの私見ですが、同じサッカーに賭けるtoto(スポーツくじ)がOKで、スポーツ・ベッティングがNGなのは、いまいち納得がいきません。許認可の前提となる法令が異なる、ハウスエッジ(totoの控除率は約50%)が違いすぎるなど、文部科学省が認めたくない理由もわからなくもないのですが、原理原則で考えればおかしな話です。カジノ解禁当初は無理だとしても、近い将来、こういうことこそアメリカにならって、スポーツ賭博を解禁していただければと思います。



◆さいごに

前々回記事で紹介した『IRで日本が変わる カジノと観光都市の未来』の著者で、日本MGMリゾーツ社長のジェイソン・ハイランド氏が興味深いコメントをされていたので、同氏の言葉を引用して本稿を締めることにします。

『カジノの状況について言えば、スロットマシーンやブラックジャックなどの定番のゲームは今後もある程度の人気を保ち続けるでしょう。しかしその一方で、若い人たちの要望に応えるため、よりエキサイティングなゲームを用意することも大切です。彼らは日常的にスマホで複雑なゲームを楽しんでいるので、時代にマッチした最新のゲームを提供する必要があります。これまで同様にスロットマシーンを設置するにしても、ただ単にスピンボタンを押して回転するドラムを見ているだけでなく、プレーヤーが選択できるオプションを増やし、それが勝ち負けに影響するようなシステムの開発が求められるかもしれません。』IRで日本が変わる カジノと観光都市の未来(P84)

ハイランド氏のお考えにはCAZYも同感で、正直、バカラやルーレットなどの運頼りのゲームでは、今の若い人は満足できないと思っています。カジノゲームでこそありませんが、若者のパチンコ離れは、その顕著な結果のひとつですし、CAZYが実施した【カジノ1万人調査】でも、テクニックが勝敗に大きく影響するテキサス・ホールデム・ポーカーは若い人に高く評価されていました。

ゲームにプレイヤーの技術介入を認めることは、これまでのカジノ業界の常識を根底から覆す必要があり、極めて困難な道のりとなることが容易に想像できます。しかしながら、ゲーミング業界の更なる発展のためには、避けては通れない道のりにつき、カジノ業界には積極的なチャレンジを期待したいと思います。