カジノビジネスモデルの終焉

ざっくり言うと

  • アンチカジノ論でお馴染みの静岡大学 鳥畑与一教授の論考
  • 突っ込みどころはあるものの、至極妥当な内容
  • 既存カジノモデルの終焉によって、日本IRは舵取りの変更を

アンチカジノ論でお馴染みの静岡大学 鳥畑与一教授の論考。突っ込みどころはあるものの、至極妥当な内容だったのでご紹介です。

3密のビジネスモデル終焉 「成長戦略」の幻想と決別を

『コロナ感染が収束して、カジノが再開したとしても、V字回復、正常化にこぎつけられるのかというと、それは怪しいといわざるをえません。例えばラスベガスがある米ネバダ州のカジノ監督機関は再開の条件として、社会的距離(ソーシャル・ディスタンス)のためスロットマシンの客同士の距離をあけ、テーブルごとの客数も制限することを求めています。再開しフル操業になったとしても、これまでのようにカジノフロアにスロットマシンを詰め込み、テーブルに客を詰め込んで、高収益をあげることはもう無理だということです。空路での客の移動がどこまで回復するのか、典型的な「3密」状態のカジノに客が戻ってくるのかということも含めて、カジノの高収益性が根本的に様変わりしました。この状態は1年、2年と続くことになります。今回のコロナウイルスへのワクチンが開発されたとしても、世界はこうしたパンデミック(世界的流行)が繰り返される危険性を抱え込んだわけで、大きな意味での成長性は失われたといえます。』(しんぶん赤旗より)

『カジノの高収益を使って、とにかく客を大量に集め、その客をカジノに誘導し、巨額の収益をあげるというIRのビジネスモデルは終焉を迎えています。少なくとも、日本のIRに100億ドルを投資し、国際観光産業をひっぱっていくとか、日本経済の成長を推進していくとか、そんな前提は完全に崩れ去ったと言えます。』(しんぶん赤旗より)

 

◆そもそもカジノは人を不幸にするビジネス

鳥畑教授は、2015年に出版された自身の著書『カジノ幻想―「日本経済が成長する」という嘘』の中で、カジノは経済成長のエンジンにはなり得ず、経済成長の恩恵を「収穫」する産業でしかないと、カジノをバッサリ切り捨てます。


『カジノ幻想』, 鳥畑与一(著), KKベストセラーズ

「カジノ・ギャンブルは客が負けるほど収益が増大するビジネスであり、それはカニバリゼーションを通じて地域経済を衰退させばかりではない。「一攫千金」を期待させながらほとんどの客を負けに追い込むことで顧客を貧しくさせるビジネスである。そしてそれはギャンブル依存症という病を中心に大きな社会的犠牲とコストを地域社会に押しつけるものであり、到底、日本経済の停滞を克服し、経済成長の推進力となるものとは言えない。」(カジノ幻想、P64)

本書の感想については、過去記事:アンチカジノ論 で詳しく書いています。

 

◆さいごに

2020年5月9日、TBSのテレビ番組「ニュースキャスター緊急拡大スペシャル!」の中で、ヤフーのチーフストラテジーオフィサー(CSO)の安宅和人氏が、コロナ後の世界ではエコノミークラスの概念は変わり、運賃が上がり、長距離移動が贅沢なものになると指摘していました。

言わずもがなですが、エコノミークラスは座席間隔の狭い3密で、今後、感染リスクを避けるためにエコノミークラスは減少しビジネスクラスやファーストクラスが標準に向かう。結果、航空券の価格は上昇し、飛行機での旅行は、限られた人だけの贅沢なものになっていくとのことです。

また、新型コロナウイルスが終息したとしても、今後、未知のウイルスへの感染リスクは強く意識され、もうコロナ以前の世界には戻らないことを前提に、ビジネス、プライベートともに今後のプランを考えた方がよさそうです。

コロナ禍によって、旅行体験も含めてほとんどのことがオンラインでできることを知った今、日本IRは大きな舵取りの変更が求められているように思います。

一方で、噂されているとおり日本カジノのメインターゲットが日本人だとすると、多くのギャンブル依存症予備軍を抱えた巣篭り状態の日本は、カジノにとって願ったり叶ったりの話でもあるのですが。

<5月20日追記>
2020年4月に日本を訪れた外国人旅行者は、新型コロナウイルスの影響でわずか2,900人と前年同月比99.9%減、日本からの出国は同99.8%減とのことでした。結果、世界の航空業界は苦境に立たされ、ヴァージン・オーストラリアや東南アジアを代表するタイ国際航空も事実上、経営破綻しました。

 

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