ブラックジャックで14億円を稼いだ秀才、ケン・ユーストン

ざっくり言うと

  • ブラックジャックで14億円を稼いだとされる日系アメリカ人のケン・ユーストン
  • ユーストンの時間あたり目標稼ぎ額は300ドル
  • 彼の哲学では、最高級のカード・カウンターでも勝てるのは6割

前回紹介した「モンティ・ホールの問題」は、映画『ラスベガスをぶっつぶせ』の中で、カード・カウンティングチームの元締め大学教授のミッキー(ケヴィン・スペイシー)が苦学生の主人公ベンに出した質問としても有名です。

「3つのうち1つが当たり。選んでない2つのうち片方が外れだった場合、選んだものを変更するか?」というミッキーの質問に対して、ベンは理路整然と「変更すれば正解率は倍になる」と回答したことで、ミッキーはベンをカード・カウンティングのチームに引き入れることを決意します。

今回は、ブラックジャックのカード・カウンティングで14億円を稼いだとされる日系アメリカ人のケン・ユーストンについて紹介します。


◆稀代の秀才、ケン・ユーストン


(画像出典:ウィキペディア

今回は、カジノを語らせたらこの方の右に出るものはいない(とCAZYが思っている)、黒野十一氏による2004年の著書「ザ・カジノ」から多くを引用しています。



「ザ・カジノ」 ,黒野十一(著),新潮社

ケン・ユーストンは、16歳で名門エール大学に入学し1955年に卒業、その後、ハーバード・ビジネス・スクールに進学、1959年に卒業して経営学修士となった秀才です。IQは169あったといわれています。

ユーストンは、得意のコンピュータを駆使して確率計算を重ね、独自のブラックジャック必勝理論で勝利を重ねました。ユーストンは、個人、チームで合計400万ドル以上(現在の価値で14億4,000万円)を稼いだとユーストン自身が語っています。

『長いカジノの歴史の中で既に神話、伝説上の人物となっているこのプロギャンブラーは、日本人の父「ウスイ・センゾウ」、アメリカ人の母エルシーの間に生まれたケネス・センゾウ・ウスイ。後に改名してケン・ユーストンとなり、「ミスター・ブラックジャック」とあだ名され、ブラックジャックの世界では「泣く子も黙る」ほど恐れられ、尊敬されもした。ブラックジャック・プロの中で最強のプレイヤーの1人で、独自のカウンティング方式だけでなく、チームプレイで全世界のカジノを恐怖のどん底にたたき込んだのだった。』(ザ・カジノより)

 

◆ケン・ユーストンの手口

ユーストンの手口は、カードをカウントする役割の仲間(カウンター)をテーブルに配し、最低単位で賭けさせながら、これまで出たカードのカウントを行い、チャンスが来たら大きく賭ける仲間(ビッグ・プレイヤー)を呼びます。カウンターは既にエースが何枚出たか、現在のプラスカウントは何点かなどをビッグ・プレイヤーに知らせ、ビッグ・プレイヤーは有利な期間に大きな賭金でプレイします。少額を賭けるカウンターは約0.5%のハウスエッジによって負けることになりますが、勝てる状況でのみ登場するビッグ・プレイヤーは大金を賭けて大きく勝つことになります。

カード・カウンティンの詳細は、『ラスベガスをぶっつぶせ』を観てください。



簡単なカード・カウンティングの仕方は、過去記事読書感想『確率論を信じて世界50か国のカジノで計8億円を稼いだ僕の人生』でも書いています。

『ラスベガスのカジノはケンを切り込み隊長とするカードカウンターの大攻勢旋風におびえ、1964年4月、ついにこれに対抗する新ルールを設定した。カード・カウンティングを「いかさま」に準じる扱いとし、「プロお断り」として立入禁止の強行措置に出たのだ。カード・カウンティング対策を専門とする警備保障会社から警備員を雇い、カード・カウンターを厳しくチェックし、発見するたびに追い出したばかりでなく、ときには暴力を振った。ユーストンも顔面を殴打されて頬骨を骨折、手術を受けたことがある。カジノはこの出入り禁止措置だけでなく、カードの組数を増やしてカードを数えることを困難にし、さらにカード全部使わず、わずか2、3回の勝負だけで繰り上げてシャッフルしたり、賭金の急激な増減を禁止したり、とカード・カウンターに対抗した。』(ザ・カジノより)

 

◆ケン・ユーストンのチーム

ユーストンは、自分のチームを構成するために多数の優秀なプロをスカウトした。ユーストンの仲間に対する要求は、時間あたり目標稼ぎ額300ドルを達成すること、カウンティング手順を厳守すること、ベーシックストラテジーを駆使し20秒以内に正しい行動ができることとされています。ユーストンのチームには、当時の世界でベスト20に入るプレイヤーのうち15人までが入っていたとのことです。

『彼の哲学では、最高級のカード・カウンターでも勝てるのは6割。1回ごとの勝負でカジノに対するエッジは最高でも4%にしかならない。これは瓶の中に52個の白豆、48個の黒豆を入れておいて、目隠しをして1粒を拾い出すとき白豆を拾う確率と同じだ。長時間やれば必ず勝てる。』(ザ・カジノより)

① 原資は最低単位での勝負、800回分の金額を確保する。800倍あれば、すってんてんになる確率は20分の1、勝てる確率は20分の19となる。
② トッププロの技量ならカジノに対するエッジを0.5%と仮定して、1日7時間労働、1日あたり原資の1.5%まで稼げる。だから原資は多ければ多いほどよい。
③ 1回の賭金の標準額は総原資の240分の1、仮に原資50,000ドルとすれば、賭金は標準が200ドル、カウントが不利な状況なら100ドル、有利な状況なら300ドル賭ける。カウントが顕著に有利になったら賭金を大きく増やす。

 

◆ケン・ユーストンの人柄

アメリカの著名な投資家 ブレアー・ハル氏は、著書のインタビューでケン・ユーストンの人柄について語っています。

カジノ側に気づかれる前、あなたはチームでのプレーがもっと続くと思っていましたか?

『もう少し目立たないようにしていれば、チームは続いたかもしれないな。問題の一つは、チームのメンバーの一人が、チームでの成功を続けることよりも本を書くことに興味を持ってしまったことだったんだ。(ケン・ユーストン著「ビッグ・プレイヤー」)。皮肉なことにこの男を他のメンバーに認めさせてチームに入れたのは、この僕だったんだ。これがチーム崩壊の始まりさ。人は認められたいという基本的な欲求を持っていて、彼は、カジノにさえも認められたいという欲求を持っていたんだ。出入り禁止にして初めて、カジノは優秀なプレイヤーだと認めるのさ。マーケットとは、正反対だね。』(「新マーケットの魔術師: 米トップトレーダーたちが語る成功の秘密」より)


ユーストンは、1987年フランス、パリにて心不全で永眠(52歳)。

 

◆さいごに

『ラスベガスをぶっつぶせ』のワンシーンで、チームの元締めミッキーが主人公のベンにギャンブルの神髄を伝えた言葉です。

もうひとつ大事なことを。
カードを読め、賭けはするな。
ルールに従ってゲームをしろ。
賭け事は熱くなる、そして人は理性を失う。
皆、感情に走る。
そうなるな。

 

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