バカラでの4,000人分のゲームデータ分析で明かされた負けの法則

ざっくり言うと

  • 京都大学こころの未来研究センターの阿部准教授らによる論文
  • 連敗後より連勝後の方が、より多くのお金を賭ける
  • 連勝後はサイドベットに賭ける割合が増加する
  • 連敗後はサイドベットに賭ける割合は減少するがベット額は増加する

京都大学こころの未来研究センター阿部准教授らによる論文がとても興味深いです。

この論文では、「過去の連続した勝敗に応じて、配当率の異なる賭け方(プレイヤー/バンカー、タイ、ペア)の割合の変化を明らかにする」ことを目的として、パラダイスシティ(韓国仁川)の匿名化された約4,000人のバカラプレイヤーのデータを分析した結果、プレイヤーが連勝・連敗すると賭け方が無謀になることが明かされています。

Effects of sequential winning vs. losing on subsequent gambling behavior: analysis of empirical data from casino baccarat players
(連勝と連敗がその後の賭けに及ぼす影響:バカラプレイヤーの実証データの分析)


『(韓国仁川のパラダイスシティ)カジノで3,986人がプレイした7,935,566ゲームのデータを分析し、過去の連勝・連敗によるベット額の変化と配当率の異なるハンドへのベット率の変化を調べた。その結果、バカラのベット額は連勝の長さに応じて徐々に増加し、連勝後の方が連敗後よりも顕著であることが明らかになった。また、勝率が低く配当率の高いサイドベットの割合は、連敗後に減少したが、連勝後に増加した。本研究は、バカラのベットに関する大規模なデータを分析した初めての試みであり、連敗よりも連勝を経験すると、ギャンブラーのギャンブル行動がより無謀なものに変化することを示している。』(論文概要より)


※分析は、 27,641 人がプレイした18,673,193 ゲームのうち、70ゲーム以上プレイした人で、かつ連続した勝敗(1回、2回、3回)の効果が反映されているゲームに限定して行われています。

 

◆本研究で明かされたこと

この分析結果は、カジノ運営者の中での定説を裏付けています。ただし、今回分析に使用されたデータのほとんどが男性(推定平均年齢は46.4歳)、約4割が日本人、約4割が中国人で、アジアの中年男性の傾向となります。


・連敗後より連勝後の方が、より多くのお金を賭ける

バカラの賭け金は連勝・連敗の長さに応じて徐々に増加し、連勝後の方が連敗後よりもその効果が顕著となっています。


<各ゲームの賭け金を予測する回帰分析の結果>
(出典:Effects of sequential winning vs. losing on subsequent gambling behavior: analysis of empirical data from casino baccarat players

 

・連勝後はサイドベットに賭ける割合が増加する

連勝後、プレイヤーは、通常のバンカー/プレイヤーのハンドに加えて、サイドベットにも賭ける傾向が強くなっています。サイドベットは、「TIE」(引き分け)や「ペア」(配られた2枚のカードが同じ数字)で勝率が低く配当率の高い賭け方です。サイドベットの割合は、連続して負けた後は減少しますが、連勝した後は増加します。この結果から、連勝後は、無謀な賭け方をする傾向が強くなることが示唆されます。

「プレイヤー」の配当は1倍(賭け金を含まず)。ハウスエッジは約1.24%。
コミッションルール:「バンカー」の配当は0.95倍(賭け金を含まず)。ハウスエッジは約1.06%。
ノーコミッションルール:「バンカー」の配当は1倍(賭け金を含まず)。ハウスエッジは約1.45%。


<サイドベット>

「TIE(引き分け)」の配当は8倍(賭け金を含まず)。ハウスエッジは約14.36%。
「PAIR」の配当は11倍(賭け金を含まず)。ハウスエッジは約10.36%。

※コミッションルールでは、勝利したバンカーのベットの5%がコミッションとして配当から差し引かれますが、ノーコミッションルールでは、バンカーが「6」で勝った場合、勝ち金が半分になる代わりにコミッションはありません。今回、分析に使用されたデータのほとんどがノーコミッションルールに基づいています。(バカラテーブルの約5分の4がノーコミッションルール)

 

ホットハンドの誤謬(hot-hand fallacy)とは、バスケットボールなどのスポーツにおいて、前回のショットが成功した場合に、次も成功する可能性が高いと信じてしまう傾向のことです。しかし、近年の研究では、バスケットボールのショットのような技術要素の強いスポーツでは、事前の成功がプレイヤーの心理的な振る舞いとそれに続く成功率を変えることはあり得る話で、ホットハンドの誤謬が本当に誤りであるかどうかは疑問視されています。

論文によると、連勝後のベット額の増加は、将来も同じような結果になるのではないかという期待感によるものと考えられています。一方で、ベット額の増加は、最終的には累積損失が大きくなる可能性が高く、リスクの高いギャンブルに足を踏み入れたように思われます。

 

・連敗後はサイドベットに賭ける割合は減少するが賭け金は増加する

論文によると、連敗後は、連勝後より少ないものの賭け金は増加しており、また、連敗後はサイドベットに賭ける割合が減少しているにもかかわらず、賭け金は増加しています。この傾向は、一発逆転を狙った無謀なチャレンジのように思われます。

 

◆さいごに

競馬や競輪などの公営ギャンブル世界に「最終レースは本命に賭けろ」という定説があります。これは、最終レースまでに大負けした客が最終レースでこれまでの負けを取り戻そうと大穴を狙うため大穴のオッズが下がり、本命のオッズが上がることに起因しています。

また、以前、何かの本で読んだのですが、一般のポーカープレイヤーは、大負けした後は慎重さを欠きこれまでの負けを帳消しにするようなラッキーな手を期待して無謀な勝負を挑み、一方で、超一流のポーカープレイヤーは勝敗にかかわらず賭け方が安定しておりセオリーに従ってプレイするそうです。(ただし、勝負重視のトーナメントは除きます。)

さらに身近なところでは、パチスロのジャグラー(安定したAタイプ)で数万円負けて、そこから一発逆転を狙ってGOD(爆裂機)で勝負するのは愚の骨頂で余計に傷口を拡げるだけです。

これらの悪手が教えてくれる教訓は、カイジでお馴染みの福本伸行先生の言葉を借りれば「ギャンブルは感情より勘定」で、熱くなったら負けということですね。

 

◆さいごに(おまけ)

この論文でもうひとつ気になったのは、本研究に使用されているデータは、韓国仁川のパラダイスシティから提供された2017年4月20日から2018年1月31日までのものです。データは、顧客カードとチップの認識システムから電子的に取得されており、すべてのバカラプレーヤーが一日中行ったすべてのベットが追跡されています。このことから、現在のカジノではお金の流れは明白で、税金の徴収もやろうと思えば完璧にやれることがわかります。しかしながら、テーブルゲームはお金のやり取りが見えないというひと昔前の理屈で、いまだにやっていないだけという話ですね。