読書感想『デビル・イン・ヘブン』

ざっくり言うと

  • 『鏑木シリーズ』でおなじみの河合 莞爾さんの『デビル・イン・ヘブン』。
  • 『デッドマン』、『ドラゴンフライ』に続く2013年に書かれた3作目の長編です。
  • 東京にカジノが誕生したその後を描く近未来フィクション。

表カジノ、裏カジノ、バカラ、東京オリンピック、政治汚職、超高齢化社会まで、CAZYのハートに刺さりまくるテーマ満載で、河合莞爾さんらしいハードボイルド調の良質なミステリーです。

『デビル・イン・ヘブン』河合莞爾 (著),祥伝社
http://amzn.asia/d/4tG3sO3

<amazonの紹介文>
雑居ビルから、一人の老人が転落死。現場には「黒い天使」のトランプが落ちていた。
刑事・諏訪は犯罪と見て謎を追うが、直後、カジノ特区「聖洲署」への異動命令が!
聳えるタワー、巨大歓楽街、謎の自衛集団、死神と呼ばれる男、そして青眼の天才ギャンブラーの伝説――
東京湾に出現した楽園には、地獄の顎(あぎと)が開いていた!
「国が国民の生命を大事にしていると、本気で思ってるんですか?」



年寄りをギャンブル依存症にして金を巻き上げる国家ぐるみの陰謀。
高齢者の私財を市場に引きずり出すためにカジノを利用する。
IR法案の裏で、きっと議論されまくったであろうテーマ。

たまたま、同時期に出版されたボストンコンサルティンググループ元社長の堀 紘一さんも著書『カジノ論』の中で、下記の指摘をされていました。こちら超一流の経営者の言葉です。『デビル・イン・ヘブン』で描かれた世界は、あながち的外れではないように思います。

「カジノには予想以上に高齢者が集まるはずだ。高齢者はお金と時間があるのに、お金を使わない傾向が強い。高齢者がカジノに出かけるようになれば、貯蓄率の高さを切り崩していける。いかに高齢者にお金を使わせるかということは、日本経済にとっては一番の課題になっていた部分だ。」

ちなみに堀 紘一さんは大のカジノ好きで、日本屈指のハイローラーだそうです。『カジノ論』では、堀氏のカジノでの武勇伝が多々語られているのですが、最後の最後に自分がカジノにはまらなければビルの一棟は建っていたはずと、つぶやかれていたのが印象的でした。


また、CAZYが『デビル・イン・ヘブン』から感じたのは、パチンコに対する強烈なアンチテーゼ。ネタバレになるので詳しくは書けませんが、本著のクライマックスでは、ものすごく悲しいストーリが明かされます。

最後に、本著でも引用されていた「精神障害者の地域ケアの促進に関する研究」が明らかにしたギャンブル依存症の実態。本研究の概要は、下記のとおり。

・病的ギャンブラー(ギャンブル依存症患者)の89.9%が、ギャンブルが理由で自殺を考えたことがある。

・病的ギャンブラーは、薬物使用障害者には及ばないものの、アルコール使用障害者や大うつ病診断該当者に匹敵する深刻な自殺傾向を呈している。

・病的ギャンブリングでは、自殺問題以外にも家庭内不和、DV、ネグレクト、職場・学校等での信頼失墜、債務問題、触法問題(横領、詐欺、窃盗・・)等の問題が生じる。


なんか重い話になってしまいましたが、『デビル・イン・ヘブン』は純粋に楽しめる良質なミステリーにつき、カジノ好きの方にはおススメですよ。